ほんの少し前

歯科での再会

練習休みの学校帰り、近所の歯医者へ行った。受付に初恋の彼女がいた。まさかの再会だ。

「え、なにしてるの?」
「えっと、ここでバイトしてるの」

歯科の制服を着て受付に座っている時点でここでアルバイトをしているのは明確なのに、なんという愚問だ。受付を終えて待合室のソファに座る。受付の彼女が気になって仕方がない。僕はチラチラと受付の彼女を見る。ん、かわいいな。んん、かわいいぞ。歯科の制服を着た彼女は少し大人っぽく見えた。僕は高校の制服である。背が伸びた僕を見てどう思っているのだろうか?彼氏はいるのだろうか?そんなことを思っていると受付の彼女に名前を呼ばれた。

「あ、はい。」

検診中、僕が考えていたことはこうだ。

どうやって話しかけよう。チャンスは帰りの受付だ。お金を忘れたふりをして後日お金を渡すというのはどうだろうか。いや、ダサいか。しかも彼女に迷惑を掛けてしまうだけか。バイトは何時までだろう。「終わるの待ってるよ」なんて気軽に話せる関係性ではないか。虫歯があればここに通えるじゃないか。どうだ、先生、僕に虫歯はありませんか?

「うん、綺麗だね。虫歯ゼロです。お疲れ様でした。」

ほんの少し前
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ぼく

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日本で暮らす