携帯のアドレス帳に、彼の名前を登録したのは卒業式の夜だった。番号は共通の友だちから聞いた。聞くときに、理由を用意していた。
登録したまま、一度もかけなかった。名前の並びのなかに彼がいることだけで、しばらくのあいだは足りていた。
機種を変えるとき、その番号だけ手で紙に書き写した。紙はまだどこかにある。