上京する日、荷物は思ったより少なかった。役者になる、と言うとき、自分でもまだよくわかっていない言葉のように感じていた。
彼女には、はっきりと行き先を伝えなかった。伝えたところで何が変わるわけでもないのに、伝えないことだけを選んでいた。
新幹線の窓から見える景色が知らないものに変わっていくのを、僕はしばらく黙って見ていた。